「実家は高台にあって、道路との間に古い石積みの擁壁がある」「裏が崖になっていて、建て替えができるかわからないと言われた」。名古屋市でも、東部の丘陵地や川沿いの段差のある土地では、擁壁の上や崖のそばに建っている実家があります。こうした実家は、建て替えのときに擁壁のやり直しが必要になることがあり、売るときには買主から擁壁の安全性や費用を問われます。
この記事では、名古屋市で擁壁や崖のそばの実家を売るときに確かめておくルールと、買主への伝え方、売り方を解説します。
この記事の結論
名古屋市では、愛知県建築基準条例のがけの規定が使われ、高さ2メートルを超える崖に接する土地では、原則として崖の高さの2倍以上離して建物を建てる必要があります。安全な擁壁があれば緩和されますが、古い石積みやブロック積みの擁壁は、建て替えのときに安全と認められず、やり直しが必要になることがあります。売る前に、擁壁の確認の記録があるか、ひび割れや傾きがないかを確かめます。2025年5月からは名古屋市の全域が盛土規制法の規制区域になっています。擁壁の状態とかかる費用の見込みを買主に伝え、古家付きのまま売るか、買取を考えます。
名古屋市の崖と擁壁のルールは?
最初に、崖や擁壁のそばの土地にかかる、名古屋市のルールを確認していきます。
崖のそばに家を建てるときのルールは?
名古屋市には崖についての独自の条例はなく、愛知県建築基準条例のがけの規定が使われます。高さ2メートルを超える崖に接する土地に建物を建てる場合は、原則として、崖の高さの2倍以上の距離を崖から離す必要があります。たとえば高さ3メートルの崖なら、6メートル以上離すことになります。崖が安全な擁壁で守られている場合などは、この距離の制限が緩和されます。
擁壁が古いと、何が困る?
擁壁が安全と認められるのは、建築基準法などの基準に合っていることが確かめられた場合です。昔の大谷石積みや、ブロックを積んだだけの擁壁、石を積み上げた擁壁は、今の基準に合わないことが多くあります。建て替えのときに擁壁が安全と認められないと、崖から距離を取って建てるか、擁壁を作り直す必要があり、作り直しには大きな費用がかかります。
擁壁の確認の記録は、どう探す?
高さ2メートルを超える擁壁は、作るときに建築確認と同じような手続き(工作物の確認)が必要です。擁壁を作ったときの確認済証や検査済証、宅地造成の許可の記録が残っていれば、基準に合った擁壁と判断する材料になります。親の書類のほか、名古屋市の窓口で記録が残っていないかを確かめます。建物の検査済証がない場合の考え方は建築確認や検査済証がない実家は売れる?で解説しています。
盛土規制法の規制区域とは?
2025年5月19日から、名古屋市の全域が、盛土規制法の宅地造成等工事規制区域に指定されています。規制区域の中で一定の規模を超える盛土や切土、擁壁の工事をする場合は、あらかじめ名古屋市長の許可が必要です。名古屋市は、土地の持ち主に、擁壁の点検と維持管理に努めるよう呼びかけています。買主が擁壁を作り直す場合も、この許可が必要になることがあります。
売る前に、何を確かめる?
擁壁や崖のそばの実家を売る前に、確かめておくことを順に見ていきます。
擁壁の状態は、どこを見る?
擁壁の表面のひび割れ、ふくらみ、傾き、目地のずれ、水抜き穴から土が流れ出ていないかを見ます。擁壁の上の地面が沈んでいたり、擁壁と地面の間にすき間ができていたりする場合は、注意が必要です。国土交通省は、宅地の擁壁の状態を点検するためのマニュアルを公開しています。気になる点があれば、建築士などの専門家に見てもらいます。
土砂災害警戒区域かどうかも確かめる
実家が土砂災害警戒区域や土砂災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域に入っていないかも確かめます。名古屋市でも、東部の丘陵地などに区域があり、愛知県や名古屋市が公開している地図で調べられます。区域に入っている場合は、売るときに重要事項説明で買主に伝えます。特別警戒区域では、建物の構造に制限がかかります。
建て替えができるかは、どこで確かめる?
がけの規定がどうかかるか、今の擁壁で建て替えができるかは、名古屋市住宅都市局の建築審査課に相談できます。測量図や擁壁の写真、高さがわかる資料を持っていくと、話が早く進みます。前の道路の扱いもあわせて確かめておくと安心です。道路の調べ方は再建築不可の空き家を売るには?で解説しています。
当社の場合
擁壁や崖のそばの実家のご相談では、現地で擁壁の高さやひび割れ、傾きを確かめて写真でお伝えし、名古屋市の窓口で建て替えの条件を確かめる段取りを進めます。擁壁の状態を踏まえて、売れる価格の見込みをお出しします。
売るときの進め方は?
擁壁や崖のそばの実家を売るときの、伝え方と売り方を確認していきます。
買主には、何を伝える?
擁壁の高さと状態、確認の記録の有無、がけの規定がかかること、建て替えのときに擁壁のやり直しが必要になるおそれがあることを、告知書と重要事項説明で伝えます。土砂災害警戒区域などに入っている場合や、盛土規制法の規制区域であることも説明します。伝えずに売ると、あとで契約不適合責任を問われるおそれがあります。考え方は古い空き家を売ったあとで不具合が見つかったら?で解説しています。
古家付きのまま売る?解体して売る?
擁壁のやり直しが必要な土地は、更地にしても建て替えの条件は変わりません。今の家を活かして住みたい買主や、リフォームして使いたい買主を探すなら、古家付きのまま売る方が向いていることがあります。売り方の考え方は古家付き土地として売るとは?で解説しています。
価格は、どう決まる?
擁壁のやり直しが必要な土地は、その費用を見込んで価格が下がることが多くあります。どのくらい下がるかは、擁壁の高さや長さ、工事のしやすさで変わります。近くの売れた例と、擁壁の状態をあわせて査定してもらいます。査定の受け方は名古屋の空き家の査定はどう決まる?で解説しています。
買取という選び方は?
擁壁の問題がある土地は、一般の買主が住宅ローンを組みにくいこともあり、売れるまでに時間がかかることがあります。早く手放したい場合や、擁壁の工事の判断を引き継いでもらいたい場合は、不動産会社の買取を考えます。比べ方は空き家は買取と仲介のどちらで売る?で解説しています。
当社の場合
売り出すまでの間は、外まわりの見回りを月4,000円(税別)からお受けし、大雨や地震のあとには擁壁のひび割れなどを写真付きの報告書でお伝えします。早く手放したい場合は、買取のご相談もお受けしています。
擁壁や崖のそばの実家についてよくある質問
擁壁や崖のそばの実家の売却について、よく聞かれる質問をまとめました。
擁壁が隣の土地との境にあります。誰のものですか?
擁壁が誰のものかは、境界の位置と、擁壁がどちらの土地に作られているかで決まります。高い方の土地を支える擁壁は、高い方の持ち主のものであることが多いですが、決めつけずに測量図と現地で確かめます。境界の確かめ方は空き家の境界がわからないときは?で解説しています。
擁壁にひび割れがあります。売る前に直すべきですか?
小さなひび割れの補修で済むか、作り直しが必要かで判断が変わります。大きな工事は費用がかかるうえ、許可が必要になることもあるため、売る前に工事をするかは、買主の使い方や価格への影響を比べて決めます。危険がある場合は、売る前でも早めに専門家に見てもらいます。
大雨や地震のあと、何を見ればいいですか?
擁壁のひび割れやふくらみが増えていないか、水抜き穴から濁った水や土が出ていないか、擁壁の上の地面に亀裂がないかを見ます。点検の進め方は台風・地震のあと、空き家で確認すべき5か所で解説しています。
擁壁が崩れて、隣に被害が出たらどうなりますか?
擁壁や塀など、土地の上に作られた物の管理が悪くて人に被害を与えた場合は、持ち主が責任を負うことがあります。空き家のままでも、持ち主の責任はなくなりません。責任の考え方は空き家のブロック塀や庭木が倒れたら誰の責任?で解説しています。
崖の下にある実家も、関係ありますか?
はい、がけの規定は、崖の上の土地だけでなく、崖の下の土地にもかかります。崖の下に建て替える場合も、崖から距離を取るか、崖が崩れても安全な構造にするなどの対応が必要になります。
擁壁や崖のそばの実家は、擁壁の状態と記録を確かめることから始めよう
名古屋市では愛知県建築基準条例のがけの規定が使われ、高さ2メートルを超える崖のそばでは、建て替えのときに崖から距離を取るか、安全な擁壁が必要になります。古い擁壁はやり直しが必要になることがあるため、擁壁の確認の記録と状態、土砂災害警戒区域かどうかを確かめ、買主にきちんと伝えてください。古家付きのまま売るか、買取にするかは、擁壁の状態を踏まえて決めます。
名古屋で擁壁や崖のそばの実家の売却でお困りの方は、名古屋空き家相談室(0120-337-900、10時から19時、年中無休)にご相談ください。初回の相談と現地確認は無料です。