「父の遺言に、実家は長男に相続させると書いてあった」「遺言で実家を売って兄弟で分けるよう指示されている」。遺言がある場合、実家の名義変更や売却は、遺言がない場合と手続きが変わります。遺言の種類や書き方によって、最初にやることも違います。
この記事では、遺言で実家を受け継いだときに最初に確かめること、名義変更の手続き、ほかの兄弟との関係で気をつけたい点、売却までの流れを解説します。
この記事の結論
遺言で実家を受け継いだら、最初に遺言の種類を確かめます。自宅で見つかった手書きの遺言は、家庭裁判所の検認を受けてから名義変更に使います。公正証書遺言や法務局に預けられていた遺言は、検認が不要です。遺言で実家を受け取った人は、ほかの相続人の印鑑証明書がなくても名義変更でき、名義を移せば単独で売れます。ただし、ほかの兄弟から遺留分としてお金を請求されることがあるため、売れる価格を早めに知っておくと話し合いが進めやすくなります。
遺言が見つかったら、最初に何をする?
最初に、遺言の種類と、必要な手続きを確認していきます。
遺言の種類で、何が変わる?
よく使われる遺言は、本人が手書きする自筆証書遺言と、公証役場で作る公正証書遺言です。手書きの遺言は、法務局に預ける保管制度を使っていたかどうかで、手続きが変わります。
| 遺言の種類 | 家庭裁判所の検認 | 名義変更に使う書類 |
|---|---|---|
| 自宅などで見つかった手書きの遺言 | 必要 | 検認済みの遺言書 |
| 法務局に預けられていた手書きの遺言 | 不要 | 遺言書情報証明書 |
| 公正証書遺言 | 不要 | 公正証書遺言の正本または謄本 |
検認とは、どんな手続き?
検認は、手書きの遺言の形や内容を家庭裁判所で確かめ、その後に書き換えられないようにする手続きです。親が名古屋市内に住んでいた場合は、名古屋家庭裁判所に申し立てます。申し立てから検認の日まで、1か月以上かかることもあります。
封がされている遺言は、検認の場で開けます。先に開けてしまうと過料を科されることがありますが、遺言そのものが無効になるわけではありません。開けてしまった場合も、検認は受けてください。
遺言があるかどうかは、どう調べる?
公正証書遺言は、全国の公証役場で、遺言があるかを検索してもらえます。法務局に預けられた遺言は、法務局で預けられているかを確かめる証明書を請求できます。
自宅の金庫や仏壇の引き出し、親が使っていた手帳の間から見つかることもあります。実家の片付けで取り出しておく物は実家の片付けで必ず取り出す物リストで解説しています。
遺言で受け継いだ実家の名義変更は?
名義変更の手続きと、遺言がある場合の違いを確認していきます。
「相続させる」と「遺贈する」で、違いはある?
遺言に「実家を長男に相続させる」と書かれていれば、長男が一人で名義変更を申請できます。2023年4月からは、「遺贈する」と書かれていても、受け取る人が相続人であれば、一人で申請できるようになりました。
一方、孫や親の兄弟など、相続人ではない人に遺贈する場合は、遺言執行者か、相続人全員と一緒に申請する必要があります。遺言の書き方を、名義変更の前に確かめておきます。
遺言がない場合と、何が違う?
遺言がない場合は、親の生まれてから亡くなるまでの戸籍や、相続人全員の印鑑証明書をつけた遺産分割協議書が必要です。遺言で実家を受け取った場合は、親が亡くなったことがわかる戸籍と、受け取る人の戸籍などで足り、ほかの相続人の印鑑証明書はいりません。
ただし、遺言で受け取った場合も、相続登記は相続を知った日から3年以内が義務です。名義変更の手続きは相続した空き家の名義変更はいつまで?で解説しています。
名義変更を急いだ方がいいのは、なぜ?
遺言で法定相続分より多く受け取った部分は、名義変更をしないと、ほかの人に権利を主張できないことがあります。たとえば、ほかの相続人が自分の持分を第三者に売ってしまうと、名義変更をしていなければ対抗できなくなるおそれがあります。
名古屋市では、相続登記がまだの間は、新しい持ち主が市税事務所に固定資産現所有者申告書を出します。遺言で受け取った場合は、公正証書遺言、検認済みの遺言書、遺言書情報証明書のいずれかを添えます。
当社の場合
遺言で受け継いだ実家のご相談では、遺言の種類、誰が受け取るか、遺言執行者が決められているかを最初に確かめます。名義変更は司法書士に頼む方法もあり、その手続きと並行して、査定や片付けの段取りなど売るための準備を進めます。遠方にお住まいの方も、電話と郵送で進められます。
ほかの兄弟との関係で、気をつけることは?
遺言どおりに受け継ぐ場合でも、ほかの相続人との関係で気をつけたい点を確認していきます。
遺留分とは?
遺留分は、亡くなった人の子や配偶者などに認められた、遺産の最低限の取り分です。兄弟姉妹には遺留分はありません。遺言で実家を一人に受け継がせた結果、ほかの子の取り分が遺留分より少なくなると、その子は不足分をお金で請求できます。
2019年7月からは、遺留分の請求はお金で支払う形になり、実家が共有になることはなくなりました。請求できるのは、遺留分が足りないと知った時から1年以内、亡くなってから10年以内です。
遺留分を請求されたら、どうする?
請求されたお金は、実家を受け継いだ人が払います。手元にお金がなければ、実家を売った代金から払う方法もあります。払う額は遺産の評価で決まるため、実家がいくらで売れるかが話し合いの材料になります。
話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所の調停を使えます。法律の判断が関わるため、弁護士に相談してください。売れる価格は名古屋の空き家の査定はどう決まる?で解説しています。
遺言と違う分け方は、できる?
相続人と、遺言で財産を受け取る人の全員が合意すれば、遺言と違う分け方もできます。ただし、遺言で分け方の変更が禁じられている場合や、遺言執行者がいる場合は、扱いが変わることがあります。
遺言と違う分け方をするときは、遺産分割協議書を作ります。書き方は実家を分ける遺産分割協議書の書き方と注意点で解説しています。
遺言で受け継いだ実家は、どう売る?
遺言の内容ごとに、売るまでの流れを確認していきます。
一人が受け継いだ場合の流れは?
遺言で実家を一人が受け継いだ場合は、その人の名義に変えたあと、その人だけで売れます。流れは、遺言の確認と検認、名義変更、査定と売り出し、売買契約、引き渡し、確定申告の順です。
相続した空き家の3,000万円控除は、遺言で受け取った場合も、条件を満たせば使えます。売却全体の流れは名古屋の空き家の売却にかかる期間と流れで解説しています。
「売って分けるように」と書かれていた場合は?
遺言に、実家を売ってその代金を分けるよう書かれている場合は、遺言執行者が売却を進めるのが一般的です。いったん相続人の名義に変えてから売り、費用を差し引いた代金を遺言のとおりに分けます。
この場合、売って利益が出たときの税金は、遺言で代金を受け取る人が、それぞれの割合で申告することになるのが一般的です。申告の方法は税理士に確かめてください。
遺言執行者がいる場合は?
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために手続きを行う人で、遺言で弁護士や司法書士、家族が指定されていることがあります。遺言執行者がいる場合は、相続人が勝手に財産を処分できず、執行者と相談しながら進めます。
実家を売る場合も、執行者と、実家を受け継ぐ人や代金を受け取る人との間で、売る時期や価格を確かめ合ってから売り出します。
当社の場合
遺言執行者が売却を進める場合は、執行者の方を窓口に、査定から引き渡しまでの経過をお伝えします。代金を受け取るご兄弟にも同じ内容をお伝えできるよう、査定の根拠や費用の見込みを書面にまとめます。売れるまでの間の実家の管理は、外まわりの見回りを月4,000円(税別)からお受けしています。
遺言どおりに実家を売りたい方へ
遺言執行者の方やご兄弟と一緒に、査定から引き渡しまでの流れをお伝えします。遠方の方も電話で進められます。相談は無料です。
遺言で受け継いだ実家についてよくある質問
遺言が2通見つかりました。どちらが有効ですか?
内容が食い違う部分は、日付の新しい遺言が有効になります。食い違わない部分は、古い遺言も有効です。手書きの遺言は、どちらも検認を受けてから内容を確かめてください。
遺言に書かれていない財産は、どうなりますか?
遺言に書かれていない財産は、相続人全員で話し合って分けます。実家だけが遺言に書かれていて、預金が書かれていない場合などは、預金について遺産分割協議書を作ります。
遺言で実家を受け継いだが、いらない場合は?
遺言の書き方によって、実家だけを断れる場合と、相続そのものを放棄する必要がある場合があります。相続放棄には、亡くなったことを知った時から3か月以内という期限があります。判断に迷う場合は、早めに専門家に相談してください。放棄の考え方は相続放棄すれば空き家の管理はしなくていい?で解説しています。
遺言で受け継いだ実家にも、相続税はかかりますか?
はい、遺言で受け取った財産も相続税の対象です。小規模宅地等の特例も、条件を満たせば使えます。考え方は実家に相続税はかかる?で解説しています。
親が元気なうちに、遺言を書いてもらうべきですか?
遺言があると、相続のあとの手続きが軽くなり、兄弟で話し合いがまとまらない心配も減ります。実家をどうしたいかを親と話す中で、遺言や生前の売却も選択肢になります。生前に売る方法は親が元気なうちに実家を売るには?で解説しています。
名古屋の遺言で受け継いだ実家は、遺言の種類を確かめることから始めよう
遺言で実家を受け継いだら、手書きの遺言なら家庭裁判所の検認を受け、公正証書遺言や法務局に預けた遺言ならそのまま名義変更に使います。名義を移せば一人で売れますが、ほかの兄弟から遺留分を請求されることもあるため、売れる価格を早めに知っておきます。遺言執行者がいる場合は、執行者と相談しながら進めてください。
名古屋の実家の相続や売却でお困りの方は、名古屋空き家相談室(0120-337-900、10時から19時、年中無休)にご相談ください。初回の相談と現地確認は無料です。