「業者に頼んで片付けたあとで、権利証がないことに気づいた」「親が家を買ったときの書類なんて、捨ててしまったかもしれない」と後から慌てる方は少なくありません。実家の片付けで捨ててしまうと取り戻せない物のなかには、相続の手続きや家を売るときの税金に直接かかわる書類が含まれています。
この記事では、実家の片付けの前に必ず取り出しておく物を、相続の手続き、家を売るとき、各種の解約や返却、思い出の品の4つに分けて一覧にし、見落としやすいしまい場所と探し方を解説します。
この記事の結論
実家の片付けの前に必ず取り出すのは、遺言書、通帳や証券の書類、借入の書類、権利証、家を買ったときの契約書と領収書、建築確認の書類、鍵の6つです。特に家を買ったときの契約書は、売ったときの税金を計算するときに必要で、なくすと税金が大きく増えることがあります。建築確認の書類は、3,000万円控除の条件である建築時期を確かめるのに使います。こうした書類は、仏壇の引き出しや押入れの奥、タンスの底にしまわれていることが多いため、業者が入る前に家族で探しておきます。
実家の片付けで、なぜ取り出す物を先に決めるの?
最初に、取り出す物を先に決めておく理由を確認していきましょう。
片付けたあとで書類がないと、何が困る?
片付けたあとで書類がないと、相続の手続きが進まない、家を売るときに税金が増える、買主に家の情報を説明できないといったことが起きます。業者に処分された物は、あとから取り戻せないケースがほとんどです。
書類の多くは役所や金融機関で取り直せますが、家を買ったときの契約書や、手書きの遺言書のように、その家にしかない物もあります。片付けを始める前に、取り出す物を決めて探しておくことが、後の手間を減らす一番の近道です。
業者に「大事な物は残して」と頼めば十分?
十分とはいえません。業者は、何がその家族にとって大事な物かを知らないため、通帳や現金のようにわかりやすい物は残してくれても、古い契約書や図面は紙ごみとして処分されやすくなります。
業者に頼む場合も、取り出す物の一覧を渡し、見つけたら捨てずに報告してもらうよう、事前に書面で約束しておくのが確実です。業者の選び方は名古屋で遺品整理・片付け業者を選ぶには?で解説しています。
相続の手続きで必要になる物
まず、相続の手続きで使う物を確認していきます。
| 取り出す物 | 使う場面 |
|---|---|
| 遺言書 | 遺産の分け方を決めるとき。見つけても開封しない |
| 通帳、キャッシュカード、印鑑 | 預金の解約や名義変更 |
| 証券会社や保険会社からの書類 | 株や投資信託、生命保険の確認 |
| 借入の契約書、ローンの返済表 | 借金の有無を確かめ、相続放棄するか決めるとき |
| 年金の書類、健康保険証 | 年金の停止や未支給年金の請求、保険証の返却 |
| 現金、貴金属 | 相続財産として分ける対象 |
遺言書が見つかったら、どうする?
自宅で手書きの遺言書が見つかったら、開封せずに家庭裁判所に提出し、検認という手続きを受けます。封がされた遺言書を家庭裁判所以外で開けると、過料の対象になることがあります。
なお、2020年7月からは、手書きの遺言書を法務局に預ける制度があり、法務局に預けられていた遺言書は検認が不要です。親が法務局に預けていたかどうかは、法務局で調べられます。
借金の書類を先に探すのは、なぜ?
借金の書類を先に探すのは、相続放棄をするかどうかを、相続を知った日から3か月以内に決める必要があるからです。借金のほうが多ければ放棄を考えることになりますが、その判断には借入の契約書や、金融機関からの通知が手がかりになります。
実家に届く郵便物にも、借入や引き落としの手がかりが含まれています。郵便物の扱いは空き家の郵便物はどうする?、相続放棄の考え方は相続放棄すれば空き家の管理はしなくていい?で解説しています。
スマートフォンやパソコンは、どうする?
親のスマートフォンやパソコンは、処分せずに取り出しておきます。ネット銀行やネット証券の口座、毎月引き落とされている契約など、紙の書類が届かない財産や支払いの手がかりが残っていることがあるからです。
ロックの解除ができなくても、端末そのものを残しておけば、あとで専門の業者に相談する余地が残ります。手帳や住所録に、パスワードや契約の控えが書かれていることもあります。
実家を売るときに必要になる物
次に、家を売るときに使う物です。ここが最も見落とされやすい部分です。
| 取り出す物 | 使う場面 |
|---|---|
| 権利証(登記識別情報) | 名義や持ち主の確認 |
| 家や土地を買ったときの売買契約書、領収書 | 売ったときの税金の計算 |
| 建築確認済証、検査済証、設計図 | 建築時期や建物の内容の確認 |
| 測量図、境界の確認書 | 土地の広さと隣との境界の確認 |
| 固定資産税の納税通知書 | 名義、評価額、税額の確認 |
| リフォームや修理の契約書、保証書 | 買主への説明、売ったときの税金の計算 |
| 鍵(すべての合鍵) | 引き渡し、管理の委託 |
家を買ったときの契約書は、なぜ大事?
家を売って利益が出たときの税金は、売った価格から、買ったときの価格と売るときにかかった費用を引いて計算します。買ったときの価格がわかる契約書や領収書がないと、売った価格の5%しか差し引けない扱いになり、税金が大きく増えることがあります。
親が何十年も前に買った家では、この書類が古い封筒に入ったまま押入れにしまわれていることがよくあります。増築やリフォームの契約書も、買ったときの価格に足せる場合があるため、一緒に探しておきます。
建築確認の書類は、何に使う?
建築確認済証や検査済証は、家がいつ、どんな内容で建てられたかを示す書類です。相続した空き家の3,000万円控除は、1981年5月31日以前に建てられた家が対象のため、建築時期を確かめるのに使います。
また、買主が住宅ローンを使う場合や、空き家を貸したり直したりする制度を使う場合に、検査済証があるかを聞かれることがあります。3,000万円控除の条件は相続した空き家の3,000万円特別控除で解説しています。
権利証が見つからなかったら、売れない?
権利証が見つからなくても、家は売れます。ただし、相続した家を売る場合でも、相続登記のあとに発行される登記識別情報が必要になり、親の代の権利証が見つからない場合は、司法書士に本人確認の手続きをしてもらうなど、手間と費用が増えることがあります。
相続登記がまだの場合は、売る前に済ませておく必要があります。手順は相続した空き家の名義変更はいつまで?で解説しています。
当社の場合
実家の売却や管理をご相談いただいた方には、片付けの前に、この記事の一覧をもとに取り出す物を確認しています。見つかった書類はその場で中身を確認し、売るときに使える書類と、取り直しが必要な書類を分けてお伝えします。家を買ったときの契約書が見つからない場合も、ほかの記録から買った価格を確かめる方法がないかを、税理士と一緒に確認します。
実家の書類が見つからず困っている方へ
売るときに必要な書類と、ないときの対処を整理してお伝えします。片付けの前の確認から一緒に行います。現地確認は無料です。
解約や返却のために必要になる物
相続や売却以外にも、手続きのために残しておく物があります。
公共料金や保険の書類は、なぜ残す?
電気、水道、ガス、電話、火災保険の書類には、お客様番号や契約番号が書かれており、解約や名義変更のときに必要です。番号がわかれば、窓口とのやりとりが早く済みます。
空き家を管理しながら持ち続ける場合は、電気と水道を残すかどうかも決める必要があります。考え方は空き家の電気・水道は解約していい?で解説しています。
返却が必要な物は、どれ?
親が亡くなったあとに返却が必要な物は、健康保険証、介護保険証、マイナンバーカード、運転免許証などです。障害者手帳やシルバーパスのように、自治体に返す物もあります。
返却の窓口と期限は物によって違うため、まとめて一つの袋に入れておき、役所の手続きのときに持っていくと漏れを防げます。
思い出の品で、残すか迷う物
最後に、手続きには使わないものの、捨てると取り返しがつかない物です。
写真や手紙は、片付けの日に選ぶべき?
写真や手紙は、片付けの日に現場で選ぶのは避けたほうが無難です。量が多く、読み始めると手が止まり、ほかの作業が進まなくなるためです。
段ボールにまとめて自宅に送り、時間のあるときに家族で選ぶ方法が現実的です。アルバムや遺影の扱いは実家の仏壇・神棚・遺影はどう処分する?でも解説しています。
家族が残したい物は、どう確かめる?
片付けの前に、兄弟姉妹や親戚に、残したい物があるかを聞いておきます。着物、時計、絵、子どもの頃の作品など、ほかの家族にとっては思い入れのある物が含まれていることがあります。
あとから「あれを残してほしかった」と言われても取り戻せないため、期限を決めて、それまでに希望を出してもらうと話がまとまりやすくなります。
大事な物は、実家のどこにしまわれている?
取り出す物がわかったら、探す場所を確認していきましょう。
見落としやすいしまい場所は?
大事な書類や現金は、仏壇の引き出し、押入れの天袋や奥、タンスの一番下の引き出し、本棚の本の間、衣類のポケットやバッグの中にしまわれていることがよくあります。金庫や手提げ金庫がある家では、鍵の場所も一緒に探します。
親が自分で決めたしまい場所は、家族が知らないことも少なくありません。一つの部屋を探し終えてから次の部屋に移るように、場所を決めて順番に探すと見落としが減ります。
遠方に住んでいて、何度も実家に行けない場合は?
遠方に住んでいる場合は、帰省の1回目を書類探しだけに使い、片付けの作業はその後にするのが効率的です。見つかった書類を持ち帰り、自宅で中身を確認すれば、次の帰省までに必要な手続きを進められます。
何度も通えない場合は、鍵を預けて、業者の作業に立ち会ってもらう方法もあります。鍵を預けるときの注意点は空き家の鍵を業者に預けて大丈夫?で解説しています。
当社の場合
遠方にお住まいで何度も来られない方には、鍵をお預かりして、片付け業者の作業に立ち会い、作業前後の写真をお送りしています。見つかった書類や貴重品の扱いは、事前にご家族とご相談のうえ決めます。立ち会いの代行は1回3,000円です。片付けのあと、家を売るか、管理を続けるかの相談もそのまま同じ担当者がお受けします。
実家の片付けで取り出す物についてよくある質問
家を買ったときの契約書がどうしても見つかりません。どうすればいいですか?
まずは、通帳の出金記録やローンの返済記録、当時の登記簿など、買った価格がわかるほかの資料がないかを探します。それでもわからない場合は、売った価格の5%を買った価格とみなして税金を計算することになります。どの資料が使えるかは税理士の判断になるため、当社から税理士をご紹介することもできます。
片付けの途中で現金が見つかったら、どうすればいいですか?
見つけた人がそのまま使わず、相続財産として扱います。ほかの相続人と分け方を話し合う対象になるため、金額と見つかった場所を記録し、家族で共有しておくとあとでもめにくくなります。
古い書類は、どこまで残せばいいですか?
家と土地に関する書類は、古くてもすべて残しておくことをおすすめします。売買契約書、図面、測量図、修理の記録は、何十年前の物でも売るときに役立つことがあります。一方、古い公共料金の領収書や、期限の過ぎた保険の案内などは、相続の手続きが終われば処分して構いません。
相続人が何人かいる場合、書類は誰が持っておくべきですか?
決まりはありませんが、手続きを主に進める人がまとめて持ち、ほかの相続人にはコピーや一覧を渡しておく方法が一般的です。原本を分けて持つと、手続きのたびに集める手間がかかります。誰が何を持っているかを一覧にしておくと、あとで探す手間が減ります。
片付けの前に、不動産会社に相談したほうがいいですか?
はい、売るかどうか決まっていなくても、片付けの前にご相談いただくのがおすすめです。家財を残したまま売る方法もあるため、片付けそのものが必要かどうかから判断できます。また、売るときに必要な書類を先にお伝えできるため、片付けの途中で捨ててしまうことを防げます。
名古屋の実家の片付けは、取り出す物を決めることから始めよう
実家の片付けでは、遺言書、通帳や借入の書類、権利証、家を買ったときの契約書、建築確認の書類、鍵を必ず取り出しておきます。特に家を買ったときの契約書と建築確認の書類は、売るときの税金にかかわるため、業者が入る前に家族で探しておくことが大切です。
名古屋の実家の片付けや売却で、書類の扱いに迷っている方は、名古屋空き家相談室(0120-337-900、10時から19時、年中無休)にご相談ください。初回の相談と現地確認は無料です。