「実家の1階は親がやっていた店で、閉めたまま残っている」「親が持っていた古いアパートに、まだ入居者が住んでいる」。こうした建物を相続すると、住まいだけの空き家とは違う手続きや判断が必要になります。入居者がいれば、相続した日から家主としての立場も引き継ぐためです。
この記事では、店舗付き住宅や古いアパートを相続したときに最初に確かめること、入居者や店の借り手への対応、税金の特例が使える範囲、売り方の違いを解説します。
この記事の結論
入居者や店の借り手がいる建物を相続すると、相続人は家主の立場と、敷金を返す義務も引き継ぎます。最初に賃貸借契約書と家賃の入金先を確かめ、入居者に連絡先と振込先を知らせます。相続した空き家の3,000万円控除は、親が住んでいた部分に限られ、アパートや貸していた部分には使えないのが原則です。売り方は、入居者がいるまま家賃収入のある物件として売る方法と、空室にしてから住まいや土地として売る方法があり、手取りと期間を比べて決めます。
店舗付き住宅や古いアパートは、何が違う?
住まいだけの空き家と比べて、違う点を確認していきます。
入居者がいると、相続人はどうなる?
相続人は、親が入居者と結んでいた賃貸借契約の家主の立場を、そのまま引き継ぎます。入居者は契約どおり住み続けられ、相続人は家賃を受け取る代わりに、建物の修繕や、退去するときの敷金の返還をする立場になります。
家主が亡くなったことは、賃貸借契約を終わらせる理由にはなりません。「相続したので出ていってほしい」と求めても、それだけでは退去してもらえない点に気をつけます。
店舗付き住宅で、気をつけたい点は?
店舗付き住宅は、1階が店で2階が住まいといった形の建物です。名古屋市内でも、商店街沿いや駅の近くの古い住宅地で多く見られます。店を閉めたあとも、厨房の設備や看板、商品の在庫が残っていることがよくあります。
店の部分をほかの人に貸していれば、アパートと同じく家主の立場を引き継ぎます。また、住まいとして買いたい人にとっては店の部分が使いにくく、店をしたい人にとっては住まいの部分が余るため、買主の幅が狭くなりやすい建物です。
固定資産税は、どう計算される?
住まいの敷地には、固定資産税を安くする住宅用地の特例がありますが、店舗付き住宅では、住まいの部分の割合で扱いが変わります。一般的な2階建てなら、住まいの部分が床面積の2分の1以上で敷地全体に、4分の1以上2分の1未満で敷地の半分に特例が使われます。
アパートは住宅として扱われるため、空室が多くても特例の対象になります。空き家と固定資産税の関係は空き家を放置すると固定資産税が上がる?で解説しています。
相続したら、最初に確かめることは?
入居者や借り手がいる場合に、早めに確かめておきたい点を確認していきます。
どの書類を探せばいい?
最初に、入居者ごとの賃貸借契約書を探します。契約の期間、家賃、敷金や保証金の額、普通借家か定期借家かが書かれています。管理会社に任せていた場合は、管理会社が入居者の一覧や家賃の入金状況を持っています。
あわせて、修繕の記録、家賃を滞納している人がいないか、火災保険の契約内容も確かめます。これらは、売るときに買主へ説明する資料にもなります。
家賃の振込先は、どうする?
家賃の振込先が親名義の口座だと、銀行が亡くなったことを知った時点で口座が止まり、家賃が入金できなくなります。入居者には、家主が変わったことと、新しい連絡先、振込先を書面で知らせます。
相続人が複数いる場合、遺産分割が決まるまでの家賃は、相続人がそれぞれの相続分に応じて受け取るものとされています。誰の口座で預かり、どう分けるかを、早めに相続人の間で決めておきます。
敷金は、誰が返す?
入居者が退去するときの敷金を返す義務も、相続人が引き継ぎます。親が受け取った敷金が手元に残っていなくても、返す必要があります。
入居者がいるまま売る場合は、敷金を返す義務を買主に引き継ぐのが一般的で、その分を売買代金で精算します。契約書で敷金や保証金の額を確かめておきます。名義変更の手続きは相続した空き家の名義変更はいつまで?で解説しています。
当社の場合
入居者のいる建物のご相談では、賃貸借契約書と入居の状況、敷金の額を一緒に確かめ、入居者がいるまま売る場合と、空室にしてから売る場合の手取りと期間を並べてお伝えします。買取のご相談もお受けしています。入居者との間で揉めごとになっている場合は、弁護士への相談をおすすめしています。
税金の特例は、使える?
売るときの税金に関わる特例を確認していきます。
3,000万円控除は、店舗付き住宅でも使える?
相続した空き家の3,000万円控除は、親が住んでいた家が対象です。店舗付き住宅では、住まいとして使っていた部分が対象で、店として使っていた部分は対象になりません。割合の計算は、税務署や税理士に確かめてください。
また、相続してから売るまでの間に、店の部分を人に貸したり、自分が事業に使ったりすると、控除が使えなくなります。条件は相続した空き家の3,000万円特別控除で解説しています。
アパートは、3,000万円控除の対象になる?
控除には、亡くなる直前に親以外に住んでいた人がいなかったという条件があります。そのため、入居者が住んでいたアパートは、原則として対象になりません。
アパートを売ったときの税金は、通常の譲渡所得として計算します。親が買った時期や価格がわかる書類が、税金を抑えるために役立ちます。計算の仕組みは名古屋の空き家を売ると税金はいくら?で解説しています。
店舗付き住宅や古いアパートは、どう売る?
売り方の違いを確認していきます。
入居者がいるまま売るのは?
入居者がいるまま、家賃収入のある物件として投資家に売る方法です。家主の立場ごと買主に引き継ぐため、入居者に退去してもらう必要がなく、早く売りやすい方法です。
価格は、年間の家賃収入と、買主が求める利回りから考えられます。たとえば年間の家賃が300万円で、買主が10%の利回りを求めるなら、3,000万円が一つの目安になります。空室が多い、建物が古く修繕費がかかるといった点は、価格を下げる理由になります。
空室にしてから売るのは?
入居者がいなくなってから、住まいや土地として売る方法です。建物を壊して土地として売れば、家を建てたい人や建築会社も買主になり、入居者がいるまま売るより高くなる場合があります。
ただし、家主から退去を求めるには正当な理由が必要で、立ち退き料を払う場合もあり、時間もかかります。普通借家の契約では、自然に退去するのを待つことになる場合も少なくありません。普通借家と定期借家の違いは名古屋の空き家を貸すリスクで解説しています。
店舗付き住宅は、誰に売る?
店舗付き住宅は、住まいとして買う人、店を始めたい人、建物を壊して土地として使う人が買主の候補になります。住宅ローンでは、フラット35のように、住まいの部分が床面積の2分の1以上あることを条件にしているものがあり、買主がローンを使えるかも価格に影響します。
閉店した店の設備は、次に同じ業種の店を始めたい人には役立つこともありますが、多くの場合は撤去して売るか、撤去費を見込んだ価格で売ることになります。残った物の扱いは家財が残ったまま空き家を売る方法で解説しています。
当社の場合
店舗付き住宅のご相談では、住まいと店の部分の広さ、用途地域、設備の残り方を現地で確かめ、住まいとして売る場合、店舗として売る場合、土地として売る場合の手取りをお伝えします。売れるまでの間に空いている建物は、外まわりの見回りを月4,000円、室内の確認を含めて月8,000円(税別)でお受けしています。
店舗付き住宅・古いアパートの相続についてよくある質問
入居者に、相続したことを知らせる必要はありますか?
はい、知らせてください。家賃の振込先や、設備が壊れたときの連絡先が変わるためです。管理会社に任せている場合は、管理会社から入居者に知らせてもらう方法もあります。
遺産分割が決まるまで、家賃は誰が受け取りますか?
遺産分割が決まるまでの家賃は、相続人がそれぞれの相続分に応じて受け取るものとされています。実際には、代表の相続人の口座でまとめて預かり、分割が決まったあとで分けることが多くあります。兄弟での決め方は相続した空き家を兄弟で揉めずに決める方法で解説しています。
古いアパートの入居者に、退去してもらえますか?
普通借家の契約では、家主から退去を求めるには正当な理由が必要で、建物が古いというだけでは認められにくいのが実情です。立ち退き料を払って合意で退去してもらう方法もあります。話がこじれた場合は、弁護士に相談してください。
閉店した店の看板は、そのままでいいですか?
古い看板は、風雨で傷んで落ちたり倒れたりすると、通行人にけがをさせるおそれがあります。売るまでの間も、外から傷み具合を確かめ、危ない場合は早めに撤去してください。撤去の費用は、解体や片付けの見積もりにあわせて頼むと手間が省けます。
店舗付き住宅は、解体して土地で売った方がいいですか?
建物の状態と場所によります。駅に近く店の需要がある場所や、建物をまだ使える場合は、そのまま売る方が手取りが多くなることもあります。解体する場合の費用は名古屋で空き家の解体費用はどう決まる?を参考に、売り方ごとの手取りで比べてください。
名古屋の店舗付き住宅や古いアパートの相続は、契約書と入居の状況を確かめることから始めよう
入居者や借り手がいる建物を相続すると、家主の立場と敷金を返す義務も引き継ぎます。最初に契約書と家賃の振込先を確かめ、入居者に連絡先を知らせます。3,000万円控除は親が住んでいた部分に限られ、アパートは原則として対象外です。入居者がいるまま売るか、空室にしてから売るかは、手取りと期間を比べて決めてください。
名古屋の店舗付き住宅や古いアパートの相続でお困りの方は、名古屋空き家相談室(0120-337-900、10時から19時、年中無休)にご相談ください。初回の相談と現地確認は無料です。