この記事の結論
亡くなった親が一人で住んでいた古い一戸建てを相続して売る場合、条件を満たせば、売却で出た利益(譲渡所得)から最大3,000万円を差し引けます(相続人が3人以上なら1人2,000万円)。主な条件は、1981年5月31日以前に建てられた家であること、相続から売るまで誰も住んだり貸したりしていないこと、耐震改修するか解体して売ること(売った翌年2月15日までに買主が行う場合も可)、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却価格が1億円以下であることです。マンションは対象外です。要件が細かく、確定申告と名古屋市の確認書が必要なので、売る前に税理士に確認してください。
相続した実家を売ったら、思っていたより税金がかかった。そうならないために知っておきたいのが、この「空き家の3,000万円特別控除」です。古い家を相続して売る場合に使える特例ですが、条件が多く、売り方や時期を間違えると使えなくなります。名古屋の実家を売る前提で、要点を整理します。
この記事は2026年10月時点の制度にもとづく一般的な説明です。税制は改正されることがあり、個別の事情で使えるかどうかが変わります。実際の適用は、必ず税理士か税務署に確認してください。当社から税理士をご紹介できます。正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。
そもそも、何の税金が軽くなるのか
家を売って利益が出ると、その利益(譲渡所得)に所得税と住民税がかかります。譲渡所得は、おおまかに次の式で計算します。
譲渡所得 = 売った金額 −(取得費 + 売るためにかかった費用)
取得費は、親がその家を買ったときの金額(建物は古くなった分を差し引く)です。昔の売買契約書がなく取得費が分からない場合は、売った金額の5%を取得費とみなすことになり、譲渡所得が大きくなりがちです。親が何十年も前に買った家は、この形になることが多く、思わぬ税金がかかります。
この特例を使うと、譲渡所得から最大3,000万円を差し引けるので、多くの場合、税金がかからないか、大きく減ります。
使える条件
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 家の建築時期 | 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家 |
| 家の種類 | 一戸建て。区分所有のマンションは対象外 |
| 亡くなる直前の暮らし | 亡くなった方が一人で住んでいた(同居人がいなかった)。老人ホーム等に入所していた場合も、要介護認定を受けていたなど一定の条件を満たせば対象 |
| 相続後の使い方 | 相続から売るまで、誰も住んでいない・貸していない・事業に使っていない |
| 売り方 | ①耐震基準に合うよう改修して家ごと売る、②家を解体して土地として売る、のどちらか。2024年1月1日以後の売却からは、売った年の翌年2月15日までに買主が耐震改修や解体をした場合も対象 |
| 売る時期 | 相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。あわせて、特例の適用期限(2027年12月31日までの売却)内であること |
| 売却価格 | 1億円以下 |
| 売る相手 | 親子・夫婦など特別な関係の人への売却は対象外 |
| 控除額 | 最大3,000万円。2024年1月1日以後の売却で相続人が3人以上いる場合は、1人あたり最大2,000万円 |
| 手続き | 確定申告が必要。家のある市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」などを添付 |
「売る時期」の数え方
期限は「相続から3年」ではなく、「相続開始の日から3年を経過する日が属する年の12月31日まで」です。
- 2024年5月に亡くなった場合 → 3年を経過する日は2027年5月 → 期限は2027年12月31日まで
- 2025年2月に亡くなった場合 → 3年を経過する日は2028年2月 → 期限は2028年12月31日まで(ただし特例自体の適用期限が延長されているかの確認が必要)
「売る日」は、原則として家を引き渡した日です(売買契約を結んだ日を選ぶこともできます)。年末ぎりぎりに売り出すと、引き渡しが年明けにずれ込んで期限を過ぎることがあります。相続登記、兄弟の話し合い、片付け、解体、買主探しと、売るまでには時間がかかるので、期限から逆算して早めに動き出すことが大事です。
耐震改修と解体、どちらで売るか
| 売り方 | 向いている家 | 注意すること |
|---|---|---|
| 解体して土地で売る | 建物が古く、買主が建て替える前提の立地 | 解体費は先に出る。解体すると翌年の固定資産税が上がる(解体してから売る?そのまま売る?) |
| 耐震改修して家ごと売る | 建物がしっかりしていて、住みたい買主がいそう | 改修費が大きく、耐震基準に適合する証明書が必要 |
| 古家付きで売り、買主が翌年2月15日までに解体・改修 | 解体費を先に出したくない、買主が建て替える前提 | 買主が期限までに工事をすることを契約で決めておく必要がある。買主側の事情で工事が遅れると特例が使えないおそれ |
2024年からの「買主が解体・改修しても可」の変更で、古家付きのまま売れるようになり、売主が解体費を先に出さなくて済むようになりました。ただし、期限までに工事が終わらないと特例が使えないので、売買契約の中で工事の期限と、守られなかった場合の取り決めをはっきりさせておく必要があります。
当社の場合
相続した空き家の売却では、最初に「この特例が使えそうか」を確認します。建築年(登記簿や建築確認の書類)、相続開始日と売る期限、亡くなる前の暮らし、相続後に誰か住んだり貸したりしていないか。使えそうなら、期限から逆算した売却のスケジュールを組み、解体して売るか、古家付きで買主に解体してもらうかを、手取りで比べてご提案します。買主が解体する形で売る場合は、工事の期限を売買契約に明記します。最終的な判断は税理士にお願いしており、ご紹介もしています。
使えなくなる、よくある落とし穴
- 相続後に誰かが住んだ、貸した:「売るまでの間だけ」でも、住んだり貸したりすると対象外です。物置として使っている程度なら問題ないとされることが多いですが、判断が分かれるので確認を。
- 亡くなる前に同居人がいた:親と子が一緒に住んでいた家は、原則として対象外です(別の特例が使える場合があります)。
- 1981年6月以降の家だった:建築確認の日付で判断します。増築している家は、登記や書類で確認が必要です。
- 期限を過ぎた:話し合いや片付けに時間がかかり、気づいたら期限を過ぎていた、というのがいちばん多い失敗です。
- マンションだった:区分所有の建物は対象外です。
- 買主の解体が期限に間に合わなかった:買主に任せる場合の、新しい落とし穴です。
- 名古屋市の確認書を取っていない:確定申告に必要です。売る前から必要書類を確認しておきます。
相続した実家を売る前に、特例が使えるか確認したい方へ
建築年・相続開始日・売る期限を確認し、期限に間に合う売却のスケジュールをご提案します。税理士のご紹介もできます。現地確認は無料です。
名古屋市の「被相続人居住用家屋等確認書」
確定申告には、家のある市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」が必要です。名古屋市の家なら、市役所本庁舎の地域振興課(052-972-3126)が窓口で、郵送でも申請でき、交付までは1週間程度、時期によっては2週間程度かかります。亡くなった方が一人で住んでいたこと、相続後に空き家だったことなどを、住民票の除票や電気・水道の使用状況などの書類で市に確認してもらいます。名古屋市の担当窓口と必要書類は、市のホームページで確認するか、窓口に問い合わせてください。
電気・ガス・水道の使用中止の記録が、「相続後に空き家だった」ことの証明に使われることがあります。相続後に光熱費の契約をどうしたかも、書類として残しておくと安心です(空き家の電気・水道は解約していい?)。
ほかの特例との関係
- 相続税を払った場合の「取得費加算の特例」:相続税を払った人が、相続から一定期間内に相続財産を売ると、払った相続税の一部を取得費に加えられる特例です。空き家の3,000万円控除とは、どちらか一方しか使えません。どちらが得かは計算が必要です。
- 親が生きているうちに親名義で売る場合:親が住まなくなった自宅を親自身が売る場合は、この特例ではなく、自宅を売ったときの3,000万円控除(居住用財産の特別控除)が使えることがあります。こちらは住まなくなってから3年目の年末までに売る必要があります(親が施設に入った。実家をどうするか)。
まとめ:相談すると何が分かるか
相続した空き家の3,000万円特別控除は、1981年5月以前の一戸建てで、親が一人で住んでいて、相続後は空き家のまま、期限内に耐震改修か解体をして売れば使える特例です。2024年から買主が解体しても使えるようになり、相続人3人以上なら1人2,000万円になりました。条件が細かく、期限を過ぎると使えないので、売り出す前に確認してください。
名古屋空き家相談室にご相談いただくと、次のことが分かります。
- その家が特例の条件に当てはまりそうか(建築年・相続開始日・相続後の使い方)
- 期限から逆算した売却のスケジュール
- 解体して売る・古家付きで買主に解体してもらう、それぞれの手取り
- 税理士のご紹介と、確認書や確定申告に向けて残しておく書類
初回の相談と現地確認は無料です。期限がある特例なので、相続したら早めにご連絡ください。