この記事の結論
「特定空家」は、倒壊のおそれがある、ごみや害虫で衛生上の問題がある、などで周りに悪い影響を与えている空き家として、市が判断したものです。判断されると、助言・指導、勧告、命令と段階的に進み、勧告を受けると翌年度から固定資産税の住宅用地の特例が外れます。命令に従わなければ50万円以下の過料、最終的には市が解体して、その費用を所有者に請求する「行政代執行」まであります。ただ、ほとんどの場合、最初の助言・指導の段階で対応すれば、そこで止まります。文書が届いたら放置せず、期限内に市へ連絡し、どう対応するかを伝えることが一番大事です。
実家の空き家について、名古屋市から「空家等の適正な管理について」といった文書が届いた。区役所の職員が家を見に来たらしい。そうした連絡をきっかけに、ご相談をいただくことがあります。特定空家とは何か、指定されるとどうなるのか、届いたらどう動けばいいのかを整理します。
固定資産税が上がる仕組みと、2023年に新しくできた「管理不全空家」については、空き家を放置すると固定資産税が上がる?で詳しく書いています。この記事は、その先の「特定空家」に絞って説明します。
特定空家とは
空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)で、市町村が次のどれかに当たると判断した空き家を「特定空家等」といいます。
| 状態 | 具体的な例 |
|---|---|
| そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある | 建物の傾き、屋根や外壁の崩れ・落下、ブロック塀の倒壊のおそれ、擁壁のひび |
| そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれがある | ごみの放置による悪臭、ネズミや害虫の発生、浄化槽の破損 |
| 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている | 屋根や外壁が汚れて傷んだまま、窓ガラスが割れたまま、敷地にごみが散乱 |
| その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である | 草木の越境、動物のすみつき、不審者の侵入のおそれ |
名古屋市は、空家法とあわせて市独自の空家条例も定めて対応しています。特定空家かどうかは、市の職員が現地を調査し、国の指針や市の基準にもとづいて判断します。
指定までと、指定されてからの流れ
- 近隣からの相談・通報:「瓦が落ちてきた」「草木が越境している」「ごみが臭う」など、ご近所から区役所や市に相談が入ることが多いきっかけです。
- 市の調査と所有者の特定:市が現地を確認し、登記や固定資産税の情報から所有者や相続人を調べます。
- 助言・指導:特定空家と判断されると、まず「草木を切ってください」「屋根を直してください」といった助言・指導の文書が届きます。この段階で対応すれば、そこで終わります。
- 勧告:指導に従わないと勧告が出ます。勧告を受けると、翌年度から固定資産税の住宅用地の特例が外れ、土地の固定資産税が最大6倍になります。
- 命令:勧告にも従わず、正当な理由がないと、期限を決めて必要な措置をとるよう命令が出ます。命令が出ると、その旨が公示され、家に標識が立てられることがあります。命令に違反すると50万円以下の過料の対象です。
- 行政代執行:命令に従わない場合、市が所有者に代わって解体などを行い、その費用を所有者に請求します。支払わなければ、財産の差し押さえなど強制的に徴収されます。
所有者がどうしても分からない場合は、命令を経ずに市が措置する「略式代執行」、2023年の改正で、災害などで緊急に必要な場合に命令を経ずに行う「緊急代執行」もできるようになりました。
代執行の費用は、所有者が払う
行政代執行で市が解体した場合、その費用は全額が所有者の負担です。市が業者に発注するため、自分で業者を選んで相見積もりを取る場合より費用を抑えにくく、家財の処分費なども含めて請求されます。さらに、解体後は更地になるので固定資産税も上がります。代執行まで進むと、所有者にとって費用面で一番不利な形になります。
相続人が知らないうちに対象になっていることも
- 名義が亡くなった親のままで、市からの文書が実家のポストに届き、誰も読んでいない(空き家の郵便物はどうする?)
- 相続人が複数いて、文書が届いた一人が「他の兄弟が対応するだろう」と思っている
- 遠方に住んでいて、家の傷みが進んでいることに気づいていない
市は登記や戸籍から相続人を調べて連絡しますが、連絡が届いた時点ですでに指導の段階に入っていることもあります。相続登記を済ませ、固定資産税の書類の送付先を自分にしておくと、市からの連絡を受け取りやすくなります(相続した空き家の名義変更はいつまで?)。
市から文書が届いたら、まずやること
- 文書をよく読む:どの段階の文書か(助言・指導か、勧告か、命令か)、何を求められているか、期限はいつか。
- 期限内に市の担当に連絡する:無視しないことがいちばん大事です。「対応するつもりがある」「いつまでに何をする」を伝えるだけでも、状況は変わります。
- 現地の状態を確認する:遠方なら、管理会社や親族に写真を撮ってもらいます。
- 求められたことを実行する:草木の伐採、ごみの撤去、屋根や塀の応急処置など。費用と業者の手配を決めます。
- 対応したことを市に報告する:写真を添えて、何をしたかを伝えます。
- 今後の方針を決める:管理を続けるか、解体するか、売るか。一度対応しても、放置すればまた同じ状態になります。
当社の場合
市からの文書が届いたというご相談では、まず文書の内容を一緒に確認し、当社が現地の状態を写真でお送りします。草木の伐採、ごみの撤去、屋根や塀の応急処置など、求められている内容に合わせて業者を手配し、対応した写真をそろえて市への報告をお手伝いします。そのうえで、同じことを繰り返さないための管理、または解体や売却の方針を一緒に考えます。助言・指導の段階でご連絡いただければ、ほとんどの場合、勧告まで進まずに済みます。
名古屋市から空き家についての文書が届いた方へ
文書の内容と家の状態を確認し、期限内に何をすればいいかをお伝えします。業者の手配と市への報告もお手伝いします。遠方の方も電話と写真で進められます。
特定空家に指定されても、売れる・補助金が使える
- 指定されていても売れる:特定空家と判断された家でも、売ることはできます。買主が解体や修繕を引き受ける前提で、現況のまま買い取ってもらう方法もあります。買主に指定の事実と求められている措置をきちんと伝えたうえで進めます(解体してから売る?そのまま売る?)。
- 解体の補助金の対象になることがある:名古屋市の老朽危険空家等除却費補助金は、市が特定空家等と判断した家屋のうち、周辺に著しい保安上の危険を及ぼしているものの解体が対象です。代執行まで待つより、自分で補助金を使って解体した方が、費用はずっと抑えられます(名古屋市の空き家補助金まとめ)。ただし、工事の前に申請が必要で、命令の段階に進むと対象外になる場合もあるので、早めに市と相談してください。
指定されないために、普段からやること
- 月1回、屋根・外壁・塀・草木・ポスト・敷地のごみを確認する
- 傷みや越境に気づいたら、苦情や通報が来る前に直す
- ご近所に連絡先を伝え、何かあれば市より先に自分に連絡が来るようにする
- 毎月の状態を写真で残し、「管理している」ことを示せるようにする
まとめ:相談すると何が分かるか
特定空家は、倒壊のおそれや衛生上の問題で周りに悪影響を与えている空き家として、市が判断したものです。助言・指導、勧告、命令、行政代執行と進み、勧告で固定資産税が上がり、代執行の費用は所有者が負担します。ただ、最初の文書の段階で対応すれば、ほとんどはそこで止まります。届いたら放置せず、期限内に市へ連絡してください。
名古屋空き家相談室にご相談いただくと、次のことが分かります。
- 届いた文書がどの段階のもので、期限までに何をすればいいか
- 家の今の状態と、求められている対応にかかる費用
- 補助金を使って解体するか、そのまま売るか、管理を続けるか
- 同じことを繰り返さないための管理(空き家管理の内容と料金)
初回の現地確認と相談は無料です。市から文書が届いたら、期限を待たずにご連絡ください。